
「訪問着を持っているけど、いつ着ればいいの?」
「結婚式に訪問着は大丈夫?」
「入学式と卒業式、どちらにも着られる?」
訪問着は準礼装として幅広いシーンで活躍する着物ですが、いつ着るのが適切なのか迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、訪問着を着る機会を具体的なシーン別に解説。結婚式、入学式・卒業式、七五三、お茶会など、それぞれの場面での選び方やマナーもご紹介します。
訪問着とは?基本を理解しよう
ここでは、訪問着とはどういったものか。基本的なことをまとめてみます。
訪問着の格と位置づけ
訪問着は準礼装(略礼装)に分類される着物です。格の序列は以下の通り。
着物の格式
- 正礼装:黒留袖、色留袖(五つ紋)、振袖
- 準礼装(略礼装):訪問着、色留袖(一つ紋)、付け下げ
- 略礼装~外出着:色無地、江戸小紋
- 普段着:小紋、紬、浴衣
訪問着は正礼装ほど堅苦しくなく、かといってカジュアルすぎない、ちょうど良い格式の着物なのです。
訪問着の特徴
- 絵羽模様(えばもよう):肩から裾にかけて、縫い目をまたいで柄が繋がる
- 既婚・未婚問わず着用可能
- 一つ紋を入れると格が上がる(結婚式などのフォーマルシーンに最適)
- 紋なしでも幅広く着られる(お茶会、パーティー、観劇など)
訪問着を着る主なシーン
ここでは、訪問着を着る主なシーンを列挙してみます。
1. 結婚式・披露宴のゲストとして
◎いつ着る:友人・同僚・遠い親戚として招かれたとき
結婚式の訪問着は、最も定番の着用シーンです。新郎新婦の母親や近い親族は留袖を着ますが、ゲストとして参列する場合は訪問着が最適です。
訪問着の選び方
- 色:淡いピンク、水色、薄紫、ベージュなど優しい色合い
- 柄:吉祥文様(松竹梅、鶴、御所車など)が格式高い
- 紋:一つ紋入りならより格式高く、紋なしでも問題なし
- 帯:袋帯でお太鼓結び
避けるべき色柄
- ❌ 白:花嫁衣装と被る可能性(避けた方が無難)
- ❌ 黒:喪服を連想させる
- ❌ 派手すぎる色:花嫁より目立つのはNG
こんな方におすすめ
- 親族ではないが、特別な友人として華やかに装いたい
- 30代以降の落ち着いた着姿で参列したい
2. 入学式・卒業式
◎いつ着る:子どもの幼稚園・小学校・中学校・高校の式典
入学式・卒業式は、訪問着を着る絶好の機会です。主役はあくまで子どもですので、控えめで品のある色柄を選びましょう。
入学式向けの訪問着
- 色:淡いピンク、水色、薄いグリーンなど明るい春色
- 柄:桜、梅、花柄など春らしいモチーフ
- 印象:希望に満ちた新しい門出にふさわしい華やかさ
卒業式向けの訪問着
- 色:落ち着いた色合い(グレー、藤色、濃紺など)
- 柄:古典柄、格調高い文様
- 印象:感謝と成長を祝う落ち着いた雰囲気
式典での訪問着マナー
- 紋は入れても入れなくても可(紋なしが一般的)
- 壇上に上がる機会があるなら一つ紋入りが安心
- 帯は袋帯または名古屋帯
3. お宮参り・七五三
◎いつ着る:子どもの成長を祝う神社へのお参り
お宮参り(生後30日前後)や七五三(3歳・5歳・7歳)は、子どもの健やかな成長を祈る大切な行事。祖父母も参加する記念撮影があるため、訪問着はぴったりです。
お宮参り・七五三向けの訪問着
- 色:優しいパステルカラー(ピンク、水色、クリーム色)
- 柄:吉祥文様、花柄、古典柄
- 避けたい:金彩が強すぎる派手なもの(子どもが主役)
季節に合わせた選び方
- 春(4月〜5月):桜、牡丹などの花柄
- 秋(10月〜11月):菊、紅葉などの秋らしい柄
- 夏(6月〜8月):絽(ろ)や紗(しゃ)の夏用訪問着
4. お茶会(茶事・初釜)
◎いつ着る:格式の高いお茶会に招かれたとき
お茶会は訪問着が最も似合うシーンのひとつ。茶道では「一期一会」の精神を大切にするため、着物でのおもてなしが喜ばれます。
お茶会向けの訪問着
- 正式な茶事・初釜:一つ紋入りの訪問着が格式高い
- カジュアルなお茶会:紋なし訪問着で問題なし
- 色:深い色合い、落ち着いた古典柄
- 避けたい:派手すぎる色、大きすぎる柄(茶室の雰囲気に合わない)
お茶会での着物マナー
- 畳に座ることを考慮し、動きやすい着付けを
- 帯は控えめなお太鼓結び
- 時計やアクセサリーは外す
5. パーティー・祝賀会・表彰式
◎いつ着る:ホテルでの食事会、祝賀会、受賞式など
パーティーや祝賀会は、訪問着で華やかに装える絶好の機会。レストランやホテルでの格式あるイベントに最適です。
パーティー向けの訪問着
- 色:華やかな色(ゴールド、シルバー、鮮やかな色)
- 柄:モダンな柄、洋風の雰囲気にも合うデザイン
- 帯:変わり結びで個性を出すのもおすすめ
シーン別の選び方
- 表彰式・授賞式:格式高い古典柄、一つ紋入り
- 食事会:明るく華やかな色柄
- 観劇:落ち着いた色合い(劇場の雰囲気に合わせる)
6. 結納・顔合わせ食事会
◎いつ着る:両家の顔合わせや結納の席
結納や顔合わせ食事会は、両家が初めて正式に会う大切な場。訪問着は格式を保ちながら、堅苦しくなりすぎない装いとして最適です。
結納向けの訪問着
- 色:落ち着いた上品な色(薄ピンク、水色、薄紫)
- 柄:吉祥文様、格調高い古典柄
- 紋:一つ紋入りが望ましい(格式を重んじる場)
7. 観劇・美術館・食事会(カジュアルシーン)
◎いつ着る:日常のお出かけを特別な日にしたいとき
訪問着は、帯や小物の合わせ方でカジュアルダウンも可能。観劇、美術館巡り、友人とのランチ会など、気軽に着物を楽しめます。
カジュアルシーン向けの訪問着
- 色:自分の好きな色、季節感のある柄
- 帯:名古屋帯で軽やかに
- 小物:モダンなバッグや草履で今風にアレンジ
カジュアルダウンのコツ
- 紋は入れない
- 帯揚げ・帯締めをカジュアルな素材に
- 半幅帯を合わせる大胆なアレンジも
→大阪で着物が似合うお出かけスポットはこちら。
色留袖については、「色留袖いつ着るシーン別ガイド」の記事もごらんください。
訪問着を着る「季節」も重要
袷(あわせ)の訪問着
いつ着る:10月〜5月
胴・袖に裏地がついた訪問着。最も一般的で、秋から春にかけて着用します。
単衣(ひとえ)の訪問着
いつ着る:6月・9月
裏地のない訪問着。梅雨時期と初秋の季節の変わり目に着用します。
絽(ろ)・紗(しゃ)の訪問着
いつ着る:7月・8月
透け感のある夏用訪問着。真夏のフォーマルシーンに着用します。
注意点
最近は屋内の空調が整っているため、真夏でもホテルの結婚式なら袷を着る人も増えています。会場の環境に応じて選びましょう。
訪問着を着るときの注意点・マナー
1. 紋の有無で格が変わる
- 紋なし訪問着:幅広いシーンで気軽に着られる
- 一つ紋入り訪問着:格が上がり、結婚式や茶事に最適
- 三つ紋・五つ紋:訪問着には通常入れない(留袖の領域)
2. 帯との組み合わせ
- 袋帯:格式高いシーン(結婚式、式典)
- 名古屋帯:お茶会、食事会、観劇など
- 半幅帯:カジュアルなお出かけ
3. 主役より目立たない配慮
子どもの行事では、親は控えめな装い。結婚式では、花嫁より派手な色は避けましょう。
訪問着を持っていない場合は?
レンタルという選択肢
訪問着は購入すると10万円〜数十万円かかりますが、レンタルなら1万円〜3万円程度で着られます。
レンタルがおすすめな人
- 年に1〜2回しか着る機会がない
- 子どもの成長に合わせて色柄を変えたい
- まずは訪問着を体験してみたい
出張着付けサービスの活用
レンタルした訪問着を自宅で着付けられる出張着付けサービスも便利です。
らくらく着付け屋(大阪)の場合
- 訪問着着付け:着付け料金はこちら
- 早朝対応・追加料金なし
- ご自宅やホテルへ出張
→大阪の訪問着出張着付けはこちら
訪問着はこんなときに着る
訪問着を着る機会をもう一度整理しましょう。
フォーマルシーン
- 結婚式・披露宴のゲスト
- 入学式・卒業式
- お宮参り・七五三
- 結納・顔合わせ食事会
- 正式なお茶会(茶事・初釜)
- 祝賀会・表彰式
セミフォーマル〜カジュアルシーン
- 観劇・コンサート
- 美術館巡り
- ホテルでの食事会
- パーティー
- 友人とのランチ会
訪問着は既婚・未婚問わず、幅広い年代で着られる万能な着物です。「いつ着るか迷っている」という方は、まずは子どもの行事や友人の結婚式から始めてみてはいかがでしょうか。
せっかくの訪問着、タンスで眠らせておくのはもったいない。次のイベントで、ぜひ袖を通してみてください。